[K17221-001]


およそ50ほどの―――十代半ばの人間の前に立つ人物の話が
お経のようにBGMとして耳に入ってきた。

それを思ってすっと息を吸うと、俺―ビャッコはきちんと意識を前に集中した。
あまり閉鎖感は感じられない鉄で出来たフロアの中に俺と同じ「研修完了者」が整列している。
一年という期間を経て成長したから・・・とまでは言いがたいかもしれないが、
それでもやっぱり「入隊式」ってのはちょっと感慨深いものがあるものである。
普段は着ない重苦しい制服を着て重苦しい話を聞くのも、
普段は我慢できない年頃の皆さんも一様に緊張した顔をしていたりする。

50人が入るのには余裕ではあるフロアの前に壇上があり、
そこにすこし頭頂部がなくなっている責任者がありがたい話を披露していた。
『研修おめでとう、そして入隊おめでとう』
それだけでいいと思うのだが・・・まあ、話好きだよなと思ってしまうわけで。
抑揚のない話し方だというのもあり、話の利き所があるわけもないし・・・
緊張していた研修完了者達は・・・30分を過ぎたあたりで少しざわつき始めてしまうのは仕方がないと思った。
かく言う俺もずっと立っていてしびれた足の位置を若干移動させようともぞもぞしてしまうわけだった。

少し周りに意識を向けてみると、似たようなことを思ったのかもぞもぞと足をうごかしている少年や少女もちらほら。
これから同じ隊員になる奴がこの中から出てくるのだと思うとちょっと興味がわいてきた。
正直、俺も男だから少女がいいと思ってしまうのは・・・美少女がいいと思ってしまうのは必然だと思う。
むしろこれを考えない奴は男としてはどうかとおもう。
と、妙に開き直り首を少し動かして白い制服の人物を一人一人眺めていく。
この組織の正装は、白が女で黒が男のため見分けやすい。
しかし、やはりというかなんというか・・・女は男に比べると少し人数が少なく・・・
結果的に25組に分けられるとして、少女―しかも美少女と組まされる確立は異常に少ないことに気づかされただけだった。
なんだかなぁ・・・。
いや、別に美少女目当てでこの組織は行ったわけじゃないんだけどさ。
むしろ女子が少ないのは研修期間で気づいていましたけどさ。
それでも若干肩を落としてしまうのを止められず、気づかれないよう小さくため息をついたとき、
ふと、目の前の二人がヒソヒソとうるさい事実に気づいてしまった。
いや、正確には目の前の人物ではなく、その右隣の人物がうるさいだけなのだが・・・
恐らく、俺の目の前の人物に話しかけているだろうことは理解できてしまった。

その片方―――右隣の少年に俺は見覚えがあった。
確かフリントとかいって今回の研修者で能力面首席だった気がする。
攻撃種一位・・・つまり攻撃の種類で最強の奴だ。能力で強い奴は俺も大抵覚えている自信があった。
別に体がごついというわけではないが引き締まっており、金の短い髪にスポーツ系の爽やかな笑みを貼り付けている奴だ。
当然女子にも人気が高いが・・・なにぶん嫌味な奴で同性にはめっぽう嫌われていたはずだ。
まあ、正直俺もあまり係わり合いになりたくない。
自分より弱い奴に喧嘩を売って叩きのめして優越感に浸るのってかなり悪趣味だと思うんだよ、俺。
要するに俺の目の前の人物が絡まれてるって訳だ、ご愁傷様だな・・・。

しかしフリントが話しかけている奴は一向に反応を示していない。
黒い服着ているから男だとは思う・・・それにこれでもかっていう黒い髪だ。後ろ髪を一つでなく二つに束ねているのも特徴的だな。
もしどんな種類の能力でも強い・・・全十位中一位〜二位くらいの奴なら俺も覚えているはずだから・・・
多分、そんなに強くないのだろう。フリントのふいをついて攻撃したとしても五分ももたないような。
後ろからなんで顔がわからないぶんなんともいえないけど。

何を言っているのか聞き取れないが、ヒソヒソ声のスピードが若干上がっているのには気づいた。
いつもの余裕の表情でなく若干ぴくぴくと口元が痙攣しているフリントは・・・恐らく。

無視されてるんじゃ?

黒髪の少年の方は微動だにしないどころか反応していない。
あれ?これまずいんじゃないか?
だって、フリントをここで怒らせたら式めちゃくちゃだし・・・相変わらず壇上の話もフリントの話も続いているけど。
我慢ならないからって能力者首席を無視するか?普通。
むしろ命知らずなのか、もし喧嘩になっても勝てる自信あるってこと?
いや、それはすごいと思いますけども・・・ないだろ。

相手は身体能力だってすごいはずだし、能力面で劣っているはずがないし・・・。
いや、だから返事しろよ・・・!

心の中でちょっとあせりながら前の人物に念を送ってみる。
当然、俺は別にテレパシーできる能力なんかじゃないから意味はないんだけど。
気持ちの問題かな?

「君は僕を馬鹿にしているのかな?」

今度の声はきちんと聞こえた。
フリントの苛立ちが若干声を大きくしていたのかもしれない。
そこでようやく少年はゆっくりフリントへと顔を向けた。
思っていたより顔は意外に整っているが、黄色の瞳がやる気のなさそうな・・・死人みたいな目をしていた。
その少年はヒソヒソ声より大きめの、意図して小さくしない声で淡々と呟いた。

「・・・さっきから何一人で騒いでんの?」

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・いやいやいや!!!待てよおい!
ぷちんというフリントの何かキレた音。
しかし、少年はポケットに手を突っ込んだままやる気なさそうにじっと見ている。
え、本当に一人で話してると思ったの?
ふ、普通ありえない!!え、ちょ、さすがに気づいてたよね?わざとだよな?

フリントの周りにバチンという音がはじけたとき、俺は慌てて二人の間に割って入った。
まずいまずいまずい!

「ちょ、ちょーっとまってくださいよフリントさん!」
「何、君?」

予想通り笑顔を引きつらせながらバキバキ指を鳴らしているフリント・・・怖いなおい。

「いや、こいつちょっと耳が遠いだけなんで!フリントさんの能力知ってて喧嘩売るなんてするわけないでしょう!?」

フリントにへりくだって話しかけると後ろからひしひしと視線を感じる。
あああああ・・・かっこ悪い俺・・・!!わかってますとも!!
しかし微妙に機嫌がよくなったのか、笑顔の引きつりが微妙になくなるフリント。
よし、おだてればいける!!

「まあ、そうだよね。じゃなきゃこの僕の話無視するなんてありえないよね。」
「そうですそうです!」

その辺でようやく壇上前の責任者が騒ぎに気づいたのか、こちらを向いた。
正直、遅いと思うけど。
でもなんとか乗り切れそうだ!この後ろでこっちを見てる馬鹿さえ何も言わなければ・・・!

「え、何。こいつナルシストなの?」

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・何故そこで口を挟むううううぅぅぅぅ!!!
空気読めこの馬鹿!何で俺仲裁したのかわかんねぇじゃねぇか!!
心の中で思い切り少年に罵詈雑言を浴びせながらぐるんと後ろを向いてぎろりと睨んだ。
しかし、少年は特に反応を示さずにぱちぱちと目を数回瞬かせただけだった。
本当に表情変えないなと妙なところで関心をしめしている場合じゃなかった!
バチンというひときわ大きな音で俺は恐る恐る振り返った。

フリントが空気の周りにバチバチという電気を発生させながら、怒り狂ってこっちを見ている。
あ、やべ・・・。

「何怒ってんの?」

名も知らない少年!!お前が当事者だ馬鹿やろおおおおおおぉぉぉ!!!
フリントは笑顔を完全にひきつらせてバキバキ手を鳴らしてこちらを見ている。
事に気づいた近くの人々がさっと避けてどよめきが全体に走った。
責任者も放っておけないと思ったのか、

「えー。そこの三人、喧嘩をやめて話を聞きな・・・・っ」

忠告は途中で途切れた。
多分、その前に見えた光の玉みたいなのが弾丸みたいなスピードで責任者を貫いたのが原因だと思うけど。
そしてその直後に壇上に会ったマイクともども机が木っ端微塵。
う、うわぁ・・・
確実にフリントの能力だ・・・攻撃種一位―――それは能力での防御不可能の代名詞。
まあ、相性もあるんだろうけど・・・って冷静にしてる場合じゃなかった・・・!!

「なんか光ってるけど。」

顎でさすな!!見るのが怖いくらいわかってますとも!
殺気びんびんですって気づいてますよ!!!
そしてこの期に及んで冷静ですね無表情ですねうらやましいよ!!

「君達にはちょっとお灸が必要そうだね・・・・!」

髪が逆立ってるよフリントさん・・じりじり近づくのはやめてください。
ついでに俺、正直無関係なんですけど。
そういう言い訳を挟む間もなくフリント発光、弾丸のようなスピードで雷の塊が打ち出される。
やべ・・・!こんな近距離で避けれるわけが・・・・!

その時どんと衝撃が走り―――後ろの少年が俺を突き飛ばしたということを理解した。


前に。


一瞬意識がブラックアウトした。
しかしなんか若干体がぴくぴくしているが生きているらしい・・・そしてなんか焦げ臭いよ・・・。
ぐっと立ち上がって少年の胸倉を掴みかかってひょいとかわされる。

「てんめええええぇぇぇぇ!!!俺を盾にしたなぁぁぁぁ!!!」
「したけど?」
「あっけらかんと言ううんじゃねぇよ人非道!卑劣!悪魔!!!」
「あ、二発目。」

少年は俺の襟首を掴んでぶんと振り回し・・・いや、どこにその筋力が・・・
一瞬意識がブラックアウトした。
ぴくぴくどころか体が痙攣してるんですが・・・・。

「生きてる?」
「殺しかけといて言う台詞かああああぁぁぁ!!」
「この制服電気通らないようになってるから。」
「なってても貫通してるから!痛いんだよ死んだらどうする!?!?」
「マゾになれば?」
「なれるかああああぁぁぁぁ!!!」

少年は俺の襟首を掴んだまま後ろにひょいと移動した。
そしてぶん回される。
神様・・・俺がいったい何をした!?
一瞬意識がブラックアウトしたとき、思い出してしまった。

成績が下の下。人の話を聞かない。能力も一般的な攻撃種五位。
気力やる気ゼロで非道な研修生がいたことを。
その最高な問題児・・・名前は確か・・・アズ・・・。
なんで今頃思い出すの俺・・・仲裁なんて入らなきゃらよかった・・・
体が全身痙攣してますしね・・・!

「アズてめぇぇぇええええぇぇぇ!!!」
「あれ?生きてた?」
「殺す気か!?」
「名前なんで知ってんの?」
「あれ?!そこは否定してくれよ!!頼むから!!」

まったく表情を変えず目だけはフリントから離さず「五分五分」と答えた。
何が!?死ぬ確立が!?

「過労死と感電死」
「死ぬのは確定事項なのか!?!?」
「めんどい。」
「何がだよ!!??」
「相手にするの。」
「俺か!?フリントか!?どっちもお前のせいだろうがっ!」
「倒すならさっさと倒せば?」
「フリントを!?無茶言うなよ!!」

当事者が人事のように淡々と言うのを一々つっこんでいると、
フリントは回りに電気をまとわせてゆっくりとこちらに歩いてきている。
多分、パニックになるのをゆっくり楽しむつもりなんだろう・・・悪趣味すぎる!!
いや、でもあの怒り方なら半分くらい死んだら許してもらえる・・・い、いや・・・半分でも嫌だ。
後は責任者やリーダーの人々がその前に止めてくれるのを願ってるけど・・・。
少し願いを込めながらちらりと視線を横に移動する。
責任者はのびてるし、同じ研修完了者はほとんど壁際に退避しているし、リーダーは何故か傍観していた。
あ、もしかして。フリントの能力見極められるために実験台にされてます?

「クク・・・土下座するなら助けてもいいよ?」

こちらから何もしないと踏んだのか、フリントは余裕の笑みでそう告げた。
まあ、散々格好悪い姿見せたから満足したのかもしれないし。
しかし!これはチャンスかもしれない!
俺が未だに襟首を掴んでいるアズの手を振り解こうとしたとき・・・
アズはぼてっと俺を落としてから首をかしげた。

「別にピンチじゃなくね?」

い・の・ち・知らずがあああああぁぁぁぁ!!!

「アホアズウウウゥゥゥ!!相手は攻撃種一位でお前は攻撃種五位だろうが!勝ち目ねぇよ!!」
「アホって、何言ってんの?」
「馬鹿野郎!!普通に考えろよ!相手は首席でお前は最下位!勝てるのかよ?!」
「攻撃種とか一位とか何?」
「テンポ遅らせて聞くなあああああぁぁぁぁ!!直接攻撃目的の能力が攻撃種!一位が最強十位が最弱!お前は中間!わかったら謝れ!!」
「なんでオレのこと知ってるの?」
「質問コーナーじゃなあああい!!!」

静電気が何度かはじける音がして、振り返ると・・・振り返らなくてもわかったが、フリントは・・・笑っていた。
すごく怒って。
ものすごい光のオーラー纏って。
怖えええええぇぇぇぇ!!!
今までのが全部手加減だったとはよくわかるくらいには大きい電気の塊・・・
サッカーボールくらいはある電気の塊らしきものをこちらに打ち出した。

え、マジで死ぬから!当たったら!容赦ないなおい!
アズが俺の襟首を掴み・・・え、また盾ですか?と思ったら横に放り投げられた。
片腕ですごい力デスネ・・・と思っていたが地面に打ちつけられる前に慌ててアズの方を見る。

アズに電気の塊が向かっていき・・・2m手前くらいで―――はじけた。

え、あれ?
ちょ、ちょっと待って。はじけたって何?
え?電気の塊が消えた?どういうことだ?
混乱したのはフリントも同様だったようで、目をぱちぱちしばたいて硬直している。
アズはポケットに入れていた片手を取り出す。
握られているのはひしゃげて焦げたナイフだった。
それを横に捨てると胸ポケット辺りから新しいナイフを取り出した。
あ。よく見るとこいつ制服じゃねぇ・・・黒いから気づかなかったけど普通のコートだ。

どうでもいいことを観察しているとカランとナイフが落ちる音がして、アズが―――動いた。
素早い動きでフリントの懐に入り込み、
ナイフの動きに気をとられたりしてあっけに取られている顔に容赦なく拳を叩き込み―――そのまま勢いをつけて地面にたたきつけた。
その間約一秒
フリントまでの距離は5mほどだった気がするが・・・圧倒的なスピードだった。

そのまますくっと体を起こしてこちらに向き直る。
そこでアズは再度首をかしげた。

「ピンチじゃなくね?」

今度こそ俺は、何もいえなかった。
後ろのフリントは完全にのびたらしく、うんともすんとも言わない。
と、とりあえず・・・

「何のためにナイフ出したの?」
「護身用」

ぱちんとナイフを閉じながらそれだけ言った。
目は相変わらず死んだようなやる気のない感じの表情で・・・
あれ、もしかしてこいつすごく強い?
能力は一般的なのに?
研修時代ほとんどさぼってたことしか記憶にないんですけど・・・。

そこで真紅の制服をまとった女性がフリントの様子を見ようとかがんでいることに気づいた。
真紅の制服・・・つまりそれぞれの隊をまとめるリーダー格・・・さっきから傍観していたリーダーがついに動いたらしい。
ついでに壇上の方を見ると責任者が未だにのびていた・・・いいのだろうか。放っておいて。

「見事にのびてるな。」

さっと立ち上がった姿は実にかっこいい。
肩まで真っ直ぐに伸びた赤に近い茶色の髪も、すらっとした長身でグラマラスな体型も、ニヒルに微笑んだ表情も。
そのカッコいい女性のリーダーはこちらを向いてニヤリと笑った。

「さて、君達は何をしたか理解してるかな?今回の責任は取ってもらわないといけないわけだが。」
「責任?」

そこではたと気づいた。
入隊式をめちゃくちゃに壊してしまったこと。
隊員一人を気絶させたこと。
そんなことで「お咎めなし」なんてあるはずがない・・・!
もしかして研修やり直しなんてコトは・・・ないとは言い切れない。

「ど、どうしよう・・・!」
「何が?」
「いや・・・もう・・・そこまで能天気だと逆にうらやましい・・・」

アズが目を数回ぱちぱちさせ、首をかしげた。
お前はいいですよね!普通にサボりまくって卒業しましたからね!
むしろなんで卒業できたんだこいつ!!

「まぁ、とりあえずこののびている奴を二人で医務室まで運んでくれ。」

きびきびした口調で、しかし咎める響きはない声で言う。
仕方なく俺はフリントの片腕を担ぐと、すぐ後に少しだけその重みが減った。
驚いてそちらを見るとアズがもう片方を無表情に担いでいる。
どういう風の吹き回しだ?
そこまでしたところでリーダーはアズと俺を交互に見て頷いた。

「おめでとう。」
「え」

俺は思わず間抜けな声を上げる。

「これで君達の平穏な生活はなくなってしまうことが確定したわけだ。」

リーダーはひょいと、空いている手に何やら封筒を押し付けた。
何を言っているのかわからず、とりあえず封筒を開けようとしたが、片手がふさがってるので難しかった。
しばらくもがいていたが無理だとわかると諦めてポケットに丁寧にしまう。
アズは器用に封筒を開けて既に内容を見ているようだった。
そしてそれをポケットにぐしゃぐしゃになりながらも入れた。
もうちょっと丁寧に・・・いや、それよりも・・・

「何て書いてあった?」
「別に。」
「さあ、早くフリント君を医務室に連れて行ってくれ。ビャッコ君にアズ君。」

リーダーに急かされて俺は慌てて、アズはマイペースに進みだす。
そして後ろからリーダーの声が聞こえた。

「私は三雲マコトだ。覚えておいてくれ。『隊員』達。」

男勝りなよく通る声で、格好いい女性リーダー・三雲マコトは言った。
それを背中で聞きながら研修完了者達がようやく起き上がった責任者の指示により元の整列に戻る中、
自動で開くドアをくぐって医務室に向けて歩き出す。

廊下にたどり着いたあたりで、

「名前。」

ポツリとアズが呟いた。
聞き間違いかと思ってアズの方を見ると、こちらを見ていたので間違いないようだ。

「はい?」
「だから、名前。」
「え?あ。俺?ビャッコだけど?」
「ふーん。」

そしてしばらく間が空いてから、また淡々とつぶやいた。

「よろしく。」
「え?」

え?
ナゼ、コイツガ、ヨロシクと・・・
一つ、そんな予感はしていたんだけどまさか・・まさか・・・!

俺はフリントが落ちるのも気にせずに片腕を振り払ってポケットから封筒を取り出した。
アズが重くなったのかぼてっとフリントを取り落としてうめき声が聞こえたがそんなことはどうでもいい!
茶色の封筒を中身を切らないように慎重に、しかしすばやく破く。
そこにはアズと同じ一枚の紙。
それを恐る恐る開くと・・・予感していたが恐れてもいた文字列が書かれていた。
ワープロで印刷され、それぞれの名前の部分だけ急に付け足したような文章だった。


『 【アズ】 【ビャッコ】 両名を三雲マコトリーダー率いる『探求救助班Aチーム』の入隊を許可する。』


そしてその下には詳細の集合時刻と寮への場所が記されており・・・、
手書きで『気に入った!入隊おめでとう!!』と書かれていたり―――

いや、 そ ん な こ と よ り も ! ! 

「え?同じ?お前と俺?」
「なんかこいつ泡吹いてるんだけど」

アズがフリントをつついて言う。
やっぱり人の話聞いてないなチクショウ!!!

「待て待て待て待て!!え、責任って!?そういうこと!?ちょっと・・・それって・・・」
「何テンパってんの?」

すごく・・・すごく・・・

「嫌だああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


俺の絶叫だけがむなしく響き渡り、廊下に静かに消えていく。
こうして、俺の平穏無事ではすまない生活は幕を開けたのだった・・・。


「うるさいんだけど。」
「誰のせいだよ・・・・!!!!」



つづく。

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