[K17221-000]
―ああ、雨だ。
雨が降る。雨が。
黒い雨が地面に降り注いで『世界』を溶かしていく。
雨。
真っ黒な雨。
灰色の世界が消える、全部。
うるさい不協和音、うるさい声、全部消えてく。
溶かして、消えて、なくなっていく。
全部消えて、なくなっていく。
「雨」
呟いた声も消えていく。
ああ、それはもともとだった。
揺さぶる振動、揺れる地面、叫ぶ人、温かなぬくもり、冷たい雨―――
そして人が―――消えていく。
音もなく、消える。
消えてしまう。
世界は溶けて、無に還る。
その時誰かが笑っていた気がした。
その時誰かが、呼んでた気がした。
―オレの世界が消えた日は、多分雨だった。
魅 鏡 ノ セ カ イ
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