※時間軸は本編第一章終了〜第二章開始まで

<会社見学> 第四話 部下三号


俺は人の思想にケチ付ける気はない。
多少抗議ぐらいはしないでもないが、基本的に個人の自由だと思う。
だが・・・
「コール先輩は爽やかで知的でかっこよくて尊敬できますよね!!」
この思想にはケチをつけたくもなるだろう?
これは小田山を助けた後、コールに強制連行される形で会社へと向かう途中の一条の発言である。
コールが先頭、そして小田山と一条に挟まれる形で俺となっている。
逃げ場なしか・・・
エフは俺の首にぶらさがってた。
・・・重い。まあ、泣きそうになるから言わないが。
それはさておき、俺は一条の発言に対して(俺にしては)柔らかく否定した。
「少なくとも知的で尊敬はできないな」
「えー!なんでですか!?」
何でって・・・
俺は目の前のスキップをしながら笑っている金髪美形変人を見た。
やっぱりこっちが聞きたいんだが・・・。
小田山(オダヤマ)に視線だけで助けを求めると、静かに首をふった。
・・・物事、諦めが肝心ということか。
「・・・しかし小田山はコールのこと崇拝してないのか?」
聞けばこの二人、今年の新入社員らしい。
だから一条の妄想を新入社員特有のものかもしれないと思ったわけだ。
長年一緒にいたら嫌でもわかるだろ?・・・普通は。
「崇拝・・・はしてない。『つよつよ』みたいには・・・尊敬は少しだけしてる。」
まあ、妥当な答えだ。
ところで『つよつよ』って会社共通のニックネームなのか?
「HUHAHAHA!コードネームだ!!」
嘘をつくな嘘を。
それにしてもお前、話聞いてたのか。
「我社は謎がモッチーだからな。」
・・・本名、一条 強とか名乗ってたぞ。
あと、モチじゃなくてモットーな。
「さすがコール先輩!物知りですね!」
スマンが黙ってろ一条。
「ちなみに小田山君は『梅ちゃん』です」
・・・人の話聞いてるか?
「エフはエフだよ!」
起きてたのかエフ。
あと、話しをややこしくするな。
「エフだもん!」
んなことで泣きそうになるな。
・・・ともかく
「後何人いるんだよ。」
「HUHAHAHA!何がだ?」
コールは高笑いしながらバック転、そして頭から着地をこなしながら聞いて来た。
良い子はマネするな。
「お前の部下のことだ。見たところ微妙な能力者ばかり集めてるみたいだが。」
「微妙じゃないだろう!一畳間なら最強なんだぞ!雨の日は最強なんだぞ!」
どうやら一条と小田山のことらしい。
しかし・・・なんだその微妙な条件は。
なんというか・・・弱点がわかりやすいな。
一条は接近戦は最強だろうが、畳一枚外から攻撃すれば勝てるだろうし・・・
小田山は雨の日でも建物の中に入れば・・・
って、だから何人いるんだよ。
「HUHAHAHA!トップストレッチだ!」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・あ。トップシークレットか。
「ですよね先輩!ストレッチは大切ですよね!!」
一条。微妙に噛み合ってなくないか?
「・・・後は3人」
小田山。裏切ってどうする・・・。いや、別にいいけどな。
「エフだもん!」
何がだよ。
・・・今頃気付いたんだが・・・こいつらにツッコミいないのか?
「HUHAHAHA!当たり前だ!」
俺は頭だけで移動しだしたコールに蹴りを入れると、ため息をついた。
「・・・帰りたくなってきた」
「あ!そういえばアルさん!コール先輩とどうやって知り合ったんですか?」
と、これはコール崇拝者一条の発言だ。
・・・アルさんってなんだよ。
「・・・特に覚えてない」
「やっぱり決闘とかでの敵で、いいライバルとかですか!?それとも・・・」
がしっと両手で手を掴まれた。
しかも思い切り羨望と期待の入り交じった視線を向けてくる。
擬音語であらわすなら・・・
「キラキラ!」
そう、それだ・・・ってエフ。頼むからマネするなよ。
「どうなんですか!?」
「いや・・・別に特には・・・」
確かに初対面で喧嘩にはなったが。
だれかこいつを止めてくれ。
コールとエフは論外だし、小田山は・・・
視線を向けると首を振った。

人間、諦めが肝心なのか?

「それとも・・・実は生き別れの兄弟とか!・・・あ、もしかして義兄弟とか!」
お前は妄想好きの女か何かなのか?
・・・別に女が必ずしも妄想好きなわけじゃないが。
「・・・普通の友人って選択ないのか?」
「えー!それじゃつまらないじゃないですか!!」
どういう理屈だよ。
しかし厄介だな・・・この発言がコールのものだったら即座に蹴り飛ばせるんだが。
なんというか・・・こいつは悪気ないしな・・・どうしたものか。
・・・どっちにしろ接近戦は不利だな。
俺はてきとうに結論付けてさりげなく一条から距離を取った。

−ガシッ

「っ!」
「いいこと思いつきました!実は親子だったとかどうですか!?」
間合いから離れられなかったようだ。
俺はキラキラした目で手を握っている一条から視線をそらし、
小田山に視線を向けた。
・・・。
・・・・・・小田山はいちごみるくをすすっている。
しかもさりげなく他人のふり

−ガシッ

俺は小田山のアホ毛を掴んだ。
「・・・!!ナンデスカイキナリ!」
何で片言・・・?
「ぼくにつよつよは止められません」
・・・断言しやがった。
俺をカオス空間に置いてく気か?

最後の頼みとばかりにエフを見たが、寝ていた。・・・まあ、静かだったからな。

「HUHAHAHA!俺は頼らないのか!?」
お前に頼る選択肢が出現するのはバットエンドの時だけだ。
「何を言う!?俺は幸運を運ぶケロリ星人の従兄弟だぞ!」
何だよそれ。
・・・その前に元凶だろ、お前。
「HUHAHAHA!ケロリ星はケロリン星の隣だぞ!!」
聞いてない。
「さすがコール先輩!」
・・・一条・・・。
俺はようやく手が解放されたので、さっさと一条の間合いから抜けた。
途中抗議の声が聞こえた気が・・・あ。
「・・・スマン。小田山。」
アホ毛を掴んだままだった。
小田山は頭をさすっている。
「いちごみるくで手を打ちましょう」
・・・後でコンビニで買っといてやる。
「ところで会社まで後どのくらい・・・」

そこで俺は思わず口をつぐんでしまう。
視界が突然黄色に染まったからだ。
隣にいたはずの小田山すら確認できない。
目がおかしくなったような錯覚に陥りそうになる。

「・・・なん、だ?」

吹雪の中に突然放りこまれたような・・・そんな感じだ。
街中で吹雪も何もないだろうが。
しかしこの黄色い物体は・・・
「花粉・・・?」

しかしこの時期にこんな大量に?
どう考えても不自然だ。
だとすると・・・

「コール!!またお前か!!」
叫ぶと、前方から返事が来た。
「HUHAHAHA!部下一号の成果だな!!」
新たな部下か・・・しかし何でまた・・・
「HUHAHAHA!お前をよく思ってない部下もいるということだ!!!」
大方お前のせいだがな。
しかし何故花粉・・・?
これだと本人の位置が特定できな・・・
「ゲフッゴホッゴホッ・・・ズズズ」
・・・。
「ゴホッゴホッヘクシッ」
・・・・・・。
「コール。まさかこの花粉出した奴・・・」
「HUHAHAHA!花粉症だな!」
・・・・・・・・・。
「ゲッホゴホッ」

−ゲシッ

俺は声の主を思い切り蹴り上げてやった。
瞬間、花粉が晴れる。
下を見るとゴーグルとマスクを装備した青年が地面に突っ伏していた。

・・・なんだろうな。
安心したよ。
コール以外にも遠慮なく蹴れそうな奴がいて。

道路に花粉青年の断末魔が響いたのはそのすぐ後だった。


続く


コールの一言
「ケロリン星人は髪が神がかっているぞ!」


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