※時間軸は本編第一章終了〜第二章開始まで

<会社見学> 第三話 猫パンチ


世の中には縁とかそういったたぐいのものがあるらしい。

何の因果か知らないが偶然知り合った人に自分と共通の知り合いをもつことなどはよくある話だ。
そういった場合、その共通の知り合いの話題で話しをした方が無難だ。

まあそれが一般論なわけだが・・・
俺と小田山 梅(オダヤマ ウメ)の場合。
「・・・まさかお前、コールの部下か?」
「うん」
「そうか。」
「・・・水」
三行で話題が終了した。
確かに俺も悪かったがな。

しかし・・・世間は狭い。
コールの部下ということは、
レインコート雨でもないのに着ていた時点で・・・
いや、それ以前にゴミ置き場で猫にKOされていた時点で気付くべきだった。
不覚だ。

・・・そういった経緯で俺は小田山を家に連れて来たわけだ。

しかし忘れていたことがあった。そう、エフだ。
エフはコールが連れて来た迷子なんだが・・・まだ小さいし色々の理由があって俺が預かっている。
年齢にしてみれば多分8歳以下だな。
実年齢は知らんが。
だから扉を開け、涙目のエフが飛びついてきた瞬間しまったと思った。
「アルギズ、いないのダメ!」
「・・・ただいま」
エフは膨れっ面で睨んできた。
迫力皆無だが。
・・・あー・・・俺が悪かったよ多分。
半分以上コールと一条のせいだが。
俺が謝るとエフは笑顔になる。
そして小田山を見つけてきょとんとした。
・・・表情コロコロ変わるな、こいつ。
「・・・水」
小田山、本格的に死にそうだな。
俺はエフを脇にどかすと、
家に入るよう促した。

居間まで案内してやるとそこでぐでーんと床にへばる小田山。
それを真似してその前方に、ちょうど向かい合う形でぐでーんと寝転がるエフ。
・・・お前ら猫か。
とにかく俺は冷蔵庫の2リットルペットボトルを取ってきた。

戻ると何故かエフが小田山のプラスチックじょうろをぺたぺためずらしそうにさわっている。
象がかわいかったのだろう。
「ほら、水だ。」
がばっと勢いよく小田山は復活し、水ををぎゅごごごと飲みだした。
・・・よく飲めたもんだ。
そして残り半分くらいをプラスチックじょうろにそそぎ、躊躇いもなく自身に頭からかける。
・・・ちょっとは躊躇え、床水浸しだろうが。
ぽたぽたと水をたらしながらも小田山の顔色がよくなった。

「助けていただいてありがとうございます・・・ぼく、水がないと死にかける体質で」
それで断水で逃げ出した訳だ。
レインコートを着ている理由もわかった。
俺はよく観察してみた。
小柄な体に肩まである髪。
水に濡れても負けない一本のアホ毛。
目は長い前髪で隠れて見えない。
特徴はそのくらいか。
だが・・・このオーラ・・・
こいつ・・・人間のくせに異能者か。
まあ、特異体質なんて珍しくもないが・・・
一条といい小田山といいどうしてコールの部下は変な能力者ばかりなんだ。
・・・いや、コールの部下だからか。

そんなシリアスなことを考えていると、小田山がエフを観察して一言。

「お子さんですか」

・・・なんだろう、今力が一気に抜けた。
「オコサン?」
エフ、あんまり深く追求するな。
俺は嘆息した。
「どう考えても年齢的にありえんだろ」
「・・・なんとなく。」
ノリか?そういうことか?
「ところであなたは誰ですか?」
こいつ・・・
「アルギズだ。一応コールの親友だ。」
小田山はなんか驚いたようだ。
「あ。コール先輩の。話は聞いてます」
ろくでもないことなのはわかる。
「・・・強暴で横暴で最凶だとか」
あの野郎・・・
「でも、」
・・・?
「思ってたよりずっと優しい」
・・・どんな想像してたんだよ。
まあ、見捨てようかと思ったことは言わない方がよさそうだな。

「ところでお前、なんでゴミ置き場にいたんだ?」
・・・訳くらい聞いてもいいだろう。
「それは・・・」
小田山は語り出した。

回想シーン1
−プルルルル・・・
「はい。小田山です。」
「あ。小田山か。今日から断水だそうだ」
「・・・そうですか」
−ガチャン
「・・・断水!!断水が来る!!」
回想シーン終了

電話の主はコールか。
しかしそれで逃げ出すのか、お前。
「水がない会社はただの会社・・・」
当たり前だ。
いや、その前にその台詞・・・
「ぼくは奴から逃げました」

回想シーン2
「来る・・・!奴(断水)が来る・・・!」
−街中を走る小田山
「・・・うわっ!」
−ちょうど路地裏で猫につまずく。
−どべしゃ
「シャー!!」
「どいて・・・こんなことしてる間に奴(断水)が・・・!」
回想シーン終了

・・・それで、猫に負けたのか。
「雨の日なら負けないのに」
そういう能力者か。
でも・・・負けたんだな。
「あの時」

回想シーン3
「このままだと・・・」
「ニャー!」
「・・・仕方ない。これでどうだ・・・!」
−バシャっとどこからともなく
−水が現れ、猫にかかる
「ニャー?」
「・・・う。もう力、が・・・」
−ばたんとゴミ置き場に倒れる。
回想シーン終了

・・・ああ。それでゴミ置き場に埋まってたのか。
「あの猫。なかなかやります。」
俺にはただの猫にみえたぞ。
つまずいたんだから怒るのも当然だな。
しかしさっきから回想がすごく馬鹿げてるような気が・・・
エフも寝てるし。
こいつはほとんどの時間寝てるがな。

「捜したぞアルギズ!!!」
バターンと派手な音とともに、金髪美形変人こと、コールが入ってきた。
ドアが壊れるだろうが。
後ろに一条も控えている。
「お前逃げるとはどぉいう・・・あれ、部下一号・・・?」
ぺこりと小田山が頭を下げた。
「おぉ!!捜したぞ!!部下一号!!」
嘘をつくな。嘘を。
「しかもアルギズを捕まえていたのだな!さすが部下一号!」
「・・・そうなのか?」
小田山は首を横に振った。
「さすがコール先輩!お見通しですね!」
一条の目にはフィルターが五重くらいかかってるようだ。
「HUHAHAHA!では帰るぞ部下一号共!」
それを聞いた小田山はびくっと反応した。
そしていやだとううふうにぶんぶん首をふる。
・・・確かに断水のところには帰りたくないかもな。
「何をわがまま言ってるのだ!!」
コールは小田山の首根っこを掴んで強制に行こうとしていた。
小田山も小田山で必死に机を掴んで抵抗している・・・。
「おいコール。あまり無理には・・・」
「だから断水しても別に水はあると言っただろうが!!!」
・・・は?
小田山と俺は共に硬直した。
「・・・水出る?」
「HUHAHAHA!抜かりはないぞ!」
・・・まあ、どうせ自分で水引いたんだろうな。だが・・・その前に・・・
「結局俺は無駄に苦労したのか・・・」
「HUHAHAHA!宿命だ・・・ぐはあっ!!」
俺は心置きなくコールをなぐり倒した。


つづく

コールからの一言
「HUHAHAHA!発明のできないコールはただのコールだ!」


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