※時間軸は本編第一章終了〜第二章開始まで

<会社見学> 第二話 部下二号


どこかの誰かへどこかの誰かへどこかの誰かへ

俺のどうでもいい話を聞いてくれ。
むしろ聞け、そして今すぐ代われ。
俺は自称コールの部下・・・
一条 強(イチジョウ ツヨシ)だったか?そいつに拉致られている。
まあ・・・正確には並んで歩いているだけなんだが。


・・・時間を少し戻そう。
コールが会社見学が当選したとかで家に来て、しかも何故か逃げ帰った後の話だ。

「あれ?聞いてませんか?オレはコール先輩の部下、
一条 強(イチジョウ ツヨシ)です!よろしくお願いします!」

元気印なこいつに手を差し出された俺は、礼儀に乗っ取って手を握り返してやった。
ついでに嫌味も言った。
「いい精神科紹介してやるよ。」
しかしそれを聞いていなかったかのように(実際聞いてなかったのか)一条は踵を返すと歩き出した。
俺の手をとったまま。
「じゃあ行きましょうか!」
どこにだよとか聞く間もなかった・・・
そのまま引っ張られるよう、いや、引きずられるように外に連れ出された。
あ。エフに飯置いてくるの忘れた。
とか思ったが・・・まあ、仕方ないだろう。
もちろんすぐに手をふり払った。何度も。
だが、あいつ尋常じゃない早さで掴み直す上に力が半端ない。
・・・そんな風に見えなかったんだが・・・。
そんな訳で、俺のささやかな抵抗は意味をなさなかったわけだ。

「逃げないから手をはなしてくれないか。痛い。」
俺が観念して言うと一条は驚いて手をはなした。
「す、すいません!お怪我は!?」
「・・・大丈夫だ。それより・・・」
「ふう・・・よかったー!コール先輩の親友さんに
怪我なんかさせてしまったらオレ・・・どうしようかと・・・」
「おい、だから・・・」
「あ。でもコール先輩『HUHAHAHA!怪我させるまえに殺されるな』
とか言ってましたから大丈夫ですよね!それにしてもさすがコール先輩の親友さんですね!一味もフタ味も・・・」
「・・・聞けよ」
それにフタ味ってなんだよ。
俺が低い声で言うと、
一条はきょとんとした。
目をぱちくりさせている。
「はい。なんですか?」
・・・こいつ。体は大人、精神年齢は子供みたいなのか?
まだ学生が抜け切らない新入社員みたいだな・・・。
「・・・お前本当にコールの部下か?」
「なにいってるんですか。当たり前じゃないですか〜」
・・・何やら笑われたようだ。
嫌味がこもらない感じに。
そして確信した。
こいつ・・・いい奴だな。
俺が少し苦手に分類する・・・まあ、それはいいとして。
「何故俺を連れていくんだ?」
「会社見学させるってコール先輩言ってましたよ。」
俺に拒否権はなしか。それにしても。
「年下に敬語はないだろ・・・何歳かは知らないが・・・」
俺もコールの知人に敬語を使う気はまったくないけどな。
まあ、いまいちやりづらい感じは拭えないけどな・・・。
「今年で19ですよ。敬語はクセみたいな物ですねー。あ。あと『つよつよ』って呼んでくださいよー!」
一条はにへらと笑いながら言った。
やっぱ・・・なんかやりづらいな。
後、あだ名はあんまりセンスないのな・・・


こういう感じで冒頭に戻る。
一条は、どうやら奴を尊敬している以外はまともなようだ。
・・・いや、あの力はまともじゃないか。
とにかく、コールといるよりは精神的には疲れない・・・と思う。
「HUHAHAHA!お前もそうとう失礼・・・」

ガゴンッ

妙な音と共に急に現れた謎の生き物が消えた。金髪美形変人ことコールだということは言うまでもないだろうが・・・
あれだ、事故だな・・・俺はただ、右手を前に出しただけだ。
「HUHAHAHA!出会い頭に殴る癖だな」
「・・・何か用かコール」
「コール先輩!何かありましたか!」
・・・こういうのを温度差とか言うんだな。
コールは深刻な顔をして切り出した。
「実はアルギズは歌が上手いらしいんだ」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・今関係ないよな、それ。
「HUHAHAHA!前菜という奴だ!」
意味がわからん。
「さて、メインティッシュといこうか・・」
なんか嫌なティッシュだな。
「小田山(オダヤマ)が消えた。」
「え!?小田山(オダヤマ)君が!?」
・・・誰だよ小田山(オダヤマ)って
唐突に話についていけなくなった気が。
いや、前からか。
「うむ。会社が一週間断水だと教えたのがいけなかったようだ・・・」
なんで断水だと消えるんだ?
「多分すぐ見つかりますよ!」
一条のノリは軽い。
「HUHAHAHA!ではさっそくいくぞ部下一号!部下一号を捜すぞ!」
・・・全員部下一号か。
「はい!コール先輩!」
二人は何故か気合いを入れて横断歩道を白いところだけ踏んで行ってしまった。
・・・忘れられてるようだし、
帰っていいか?


俺は面倒になって家の帰路についた。
まあ、会社見学は 必要ないだろうし・・・
そう考えながら歩いていくと、途中で妙な視線を感じて立ち止まってしまった。
俺は本通りから脇道にそれていたため、道に人はいない。
・・・いないはずだ。
いてもゴミ置き場のゴミや人を漁っている猫くらい・・・

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・なんだよ人って。

俺は先程からの視線の正体がわかり、安心して関わらないように再び歩き出した。
「・・・水」
しかし不覚にもその言葉に立ち止まってしまう。
「・・・水」
ホラーな気がする。
俺は渋々振り返ると、ゴミに埋もれた人物と目があった。
若い男性・・・少年と言っても過言ではない感じだ。
「・・・何してんだ?」
「・・・水をください」
確かに生気はないようだが・・・
こんな街中で脱水症状とは。
どうなってんだ?
「とりあえず出たらどうだ・・・」
「うん」
何故かほふく前進で這い出して来る。
しかも途中で何度も猫にはたかれていた。
「・・・歩けるならついてこい。ここから俺の家近いから、水欲しいんだろ?。」
こくりと頷いたのを見て、俺は歩き出した。正直いうと、あまり関わりたくないのだが
・・・ほっとくと夢見悪そうだ。
ぼろぼろのレインコートに子供用のプラスチックじょうろ・・・
水遊びでもしてたんだろうか。
まあ、どっちにしろ不審者だが。
・・・いや、まてよ
水・・・断水・・・
嫌な予感がする。
俺は嫌な汗を無視しながら聞いた。
「お前、名前は?」
少年は答える。
そして俺の予想通りの答えを言う。

「小田山 梅(オダヤマ ウメ)です」

こいつが断水で逃げ出したコールの部下。
・・・俺精神的にかなり疲労していくのがわかった。
コール・・・やっぱり後で一発蹴らせろ。




続く

コールの一言
「HUHAHAHA!今日からお前はケロリの民だな!」






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