※時間軸は本編第一章終了〜第二章開始まで

<会社見学> 第一話 部下一号


『アルギズへ』

そう記され、けばけばした黄色い蛍光色の封筒がある。
もちろん俺の目の前にだ。
不覚にも俺は家のポストの前で硬直してしまった。
誰だって蛍光色の封筒があれば多少なりとも驚くだろ?
なんか直視したくはないが、どうも俺宛てのようなので開かなければいけないだろう。
・・・開けたくないが。
むしろごみ箱に直行させたいが。
しかしこの差出人であろう人はたまにくだらないこと以外でも連絡をよこすからな・・・
開けるか、燃やすか、切るか、山羊の餌にするか。
選択肢は4つに1つだ。
まあ、仕方ないから開けるけどな。
黄色い封筒をつまむ。
裏にはやはり想像通りの人物の名前−コールと記されていた。
妙にのばす記号が長かったり、裏だけ蛍光塗料が塗ってなくて『今回のテーマ:金閣寺』とか書いてあるのは気のせいだろう。
多分経費削減だろうが・・・切手はない。
あいつ・・・直接持ってきたな・・・
なんというか・・・あきれた。
10歳年上の金髪美形変人自称天才科学者が高笑いしているのが容易に想像できた。
・・・頭痛い

取りあえず居間に戻ると封筒を開けた。
『背景 亜婁魏図 様』
・・・・・・拝啓 アルギズ 様って書きたかったのか?漢字通りだとしたら嫌な図だな。
『この度、会社見学会に当選いたしました。』
・・・・・・よし。燃やそう。
俺は意を決してライターを取り出した。
非常に残念だコール。
「HUHAHAHA!そろそろ読み終わった頃だな・・・ってあああああ!!!」
何だ朝っぱらから
「お前何燃やしてるんだああぁぁー!」
突然現れたのは俺の手の中で燃え尽きた手紙の差出人、コールだった。
「な、なにがいけなかったんだ?金か!?名誉か!?銀閣寺派か!?ジョナサンか!?」
銀閣寺は関係ないだろ。
・・・しかも何だよジョナサンって
「ジョナサンは全世界を支配するぞ!」
・・・意味わからん
つかそれならジョナサン連れてこい。
「HUHAHAHA!いるさ!心の中に!」
ズビシ!と明後日の方向に指をさす。
なんかキラキラとしたエフェクトがかかっている。
正体はコールの後ろの照明なわけだが。
しかもなんか左手で後ろに指示を・・・
後ろに指示・・・??
「おい、誰だよこいつ」
俺はコールの後ろで音楽を入れようとしている青年を見つけて眉根をしかめた。
青年はびくりと派手に飛び上がる。
ついでにその拍子にサスペンスっぽいBGMが流れた。
・・・隠れるならもうすこし上手く隠れろ。
何故か妙に痛い空気を感じながらコールを見る。

コールは白くなっていた。

まあ、右手のチョークが全てを物語っているが・・・
それよりあいつは誰だよコール。
同盟か?
同類か?
ちなみに前者だと切り掛かり、
後者だと蹴る予定だ。
ああ・・・子分ならいい精神科を紹介してやろう。
しかしコールはいっこうに言う気配はない。青年は青年でソファを壁に、俺を観察している。
・・・俺は猛獣か?
コールのサンタ帽子をひっぱってチョークの粉を乱暴に掃う間、俺は横目で知らぬ客を盗み見た。
・・・ヤワラみたいな髪型の青年だ。
俺より年上だろうが顔の作りはどこか幼い印象を受ける。
一言で言うなら童顔だな。
「ぎゃああああ!!!」
何故かコールの悲鳴が手元から響いた。
片耳をふさいで手を離すと、妙な生物が床でのたうちまわった。
何かはあえて言うまい。
しかし一言言うなら
『引っ張りすぎた』ということだろう。
そんなことより、
コール。お前悲鳴遅くないか?
「大器晩成」
妙な生き物は親指を立てて言った。
エフェクトがまたかかっている。
無性に殴りたい。殺意をこめて。
「HUHAHAHA!」
その前に悲鳴が大器晩成の意味あるか?
「ぎゃああああぁぁぁぁ!!」
今度は何だ。
「先手必勝?」
俺に聞くな。
「じゃあどうしろと!?この悲鳴は先手晩成!!??」
・・・本末転倒だろ。それ。
ああ・・・こいつと話すと話しが進まん。
だからいったい誰なんだよ。
それとも『何』の方がいいのか?
人間に見えるが・・・
俺はヤワラ青年に近づいた。
なんか変な目で見てくる。
いや、微妙に羨望の眼差しな気がするのは何故だ。
なんか目があわせづらくなって目をそらしてしまう。
「コール。そもそも何をしに・・・」
振り返るとそこには等身大コール人形が。
・・・逃げられた。
こいつに気をとられてる隙に。
・・・なんか俺、こいつ苦手な気がする。勘だけどな。
俺は辺りを見渡した。
この際どこにあの人形を隠してたんだとかは考えないことにした。
「コール先輩帰っちゃいましたね」
だな。何しにきたん・・・・・・
「どうかしたんですか?」
・・・・・・。
「顔色が青いですよ。」
「・・・何だって?」
俺はヤワラ青年に問いかけた。
「『顔が青いですよ』」
「その前。」
「ええっと。『どうかしたんですか』」
「その前。」
「あっははは。忘れちゃいました。」
なんか笑われた。
嫌なくらい爽やかである。
「お前。コールの後輩なのか?」
「あれ?聞いてませんか?オレはコール先輩の部下、一条 強(イチジョウ ツヨシ)です!よろしくお願いします!」
元気が取り柄であろうコールの部下・強は、勢いよく、威勢よく手を差し出して来た。
・・・とりあえず俺は
「いい精神科紹介してやるよ。」
三番目の選択肢を取ることにした。


つづく

コールの一言
「HUHAHAHA!俺は金閣寺派だ!」


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