※時間軸は本編第一章終了〜第二章開始まで
※アルギズ視点の一人称で進みます。


<研究所騒動>  前編 「設立・コール研究所」


もう空が白み始めた・・・
もう朝か。
はあ、と俺は何度目かわからない溜息をついた。
それにしても、だ。
最近溜息をつく回数が増えた気がする。
いつの間にか俺は妙なポジションを獲得してしまったようだ。
これほど不名誉のものも珍しいが・・・
つまり『苦労キャラ』になったということである。

それにしてもいつの間に苦労キャラになったんだよ、俺は。
はあ、とまたしても溜息が漏れる。
最近連日の仕事でまともに寝てないからな、
早く平和に寝たいんだが・・・

机でうたたねできるのならまだいい。
だが、なかなかそうはいかないのが最近である。

-時刻は午前五時。

『奴』は来る気配もない。
しばらく俺は考えていたが、息を吐いて決意した。

「寝るか。」

そうつぶやいて今までついていた机の電気を消して立ち上がる。
パソコンだけの光が部屋を満たす・・・。
その時、かすかな音がした。


-きぃ・・・


部屋の扉の開く音だ。
ほとんどのものが聞き漏らすような微かな音・・・
だが、人間よりはいい耳がこの音を聞き逃すはずがない。
そしてそれと同時に起こった忍び笑いも、もちろん耳に入ってきた。
やっぱり、来たな。

「コール、普通に来い、普通に。」

そんな登場されるとジャンルンが色々と間違われるだろうが。
・・・・あと、どうやって家に侵入してるんだ?
笑い声がぴたりと止んだ。

「何故、正体がわかった・・・!?」

声に緊張が走る。

「何故って・・・お前な・・・」

こんな不気味な登場する知り合いはお前くらいしかいない。
しかも、連日来れば誰だってわかるだろうが。

「俺の変装は完璧だったはず!!」

聞けよ、人の話。

「さ、さてはアルギズ・・・お前エスパーだなっ!!??」

どうやらコールの耳には何十ものフィルターが搭載されているらしい。

「で、何のようだ?」

わかっているが一応聞いてみる。
扉の近くに立っていたコールは姿勢を正すと、咳払いをした。
そしてぺかりと懐中電灯をつけた。
しかもお決まりの顔の下から照らしている。
不気味と言えば不気味だ。
だが、どちらかといえば『間抜け』という表現の方が適切な気がする。

しばし沈黙が流れる・・・

こらえきれずに口を開いたのは俺だった。
「で?」
コールはその答えに、顔を真っ青にし、懐中電灯を取り落とした。

―ガシャン

室内が再びパソコンの光だけで満たされる。
コールはがっくりと床に膝をつき、うなだれている。
「コール?」
毎回のことだが、訳がわからん。

「しまったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

は?
「こんにゃくセットを忘れたぁっ!!!!!」
・・・・・・・・・。
「あれがないからアルギズは驚かないんだな!?」
いや、驚けと言われてもな・・・
だから、何しに来たんだ?
話が全く進む気配がないだろうが。

「・・・忘れてた」

こいつは、目先のことに木をとられて目的を忘れてしまうタイプらしい。
「いや、ちょっと様子を見に・・・」
「ああ。あいつのか?」

ちなみにあいつとはコールが先日拾ってきた子どものことだ。
名前は「ビックリマン20号」
毎回ながらこいつのネーミングセンスはどうかと思う。

「別に毎日来なくてもいいだろうが」
しかも明け方に。
俺の寝不足は半分以上こいつのせいだ。

だいたい、あの子どもがこんな時間に起きている訳がないだろう。
「アルギズはおきてるじゃないか。」
それはお前が押しかけてくるからだろうが。

「まあまあ、茶菓子でも食べて落ち着け。」
そう言ってコールは賞味期限切れのまんじゅうを食べ始めた。

「いまどきレモン味のまんじゅうもめずらしいな」
そうだな。それは腐ってるだけだが。
そんなことはおかまいなしにコールはまんじゅう1ダース食べきった。
毎回思うがこいつの消化器官はどうなっているんだ?最強すぎるだろ・・・。
「じゃあ今日は顔だけ見てくるか。」
そうしてくれ。俺は朝飯作ってくる。

「お前・・・母さんっぽいな」

黙れ。さっさと帰れ。
「しかし今日は朝飯よりもやることがあるぞ?」
・・・なんだ?
「睡眠だ。思う存分寝て来い。」
・・・・・・・・・・急にどうしたんだ?お前。

「HUHAHAHA!親友の睡眠不足を心配して何が悪い?」
・・・・・・それもそうだ。半分以上お前のせいだがな。
「というわけでさあ寝ろ!」
「怪しいな。」
「HUHAHAHAHA!さもないと催眠ガスをばらまくぞ!!」

・・・・・・脅しか?
でも、まあ別に寝て悪いことはなさそうだ。
確かに俺も限界に近い。

溜息をついてコールに『部屋のものにさわるなよ』と釘を刺してから一階に向った。
自分の部屋よりソファの方が寝やすい。
ちなみにビックリマンは二階の俺の部屋の隣にある簡易ベッドで寝ている。
俺より寝やすい環境と言うのはなんともうらやましいな・・・。


そんなこんなでソファに沈むと、眠気はすぐに襲ってきた。
それに身を任せるように眠る。


―――


――





どのくらい眠っただろう・・・目を覚まし、腕時計に目をやる。
『AM 6:25』
どうやら一時間と少ししか寝なかったようだ。
日頃浅い睡眠を心がけている成果なのだが・・・なんか少し空しい。

そこで、俺はようやく異変に気づいた。

「なんだ?ここは・・・?」

それは壮絶な光景だった。SFに出てくるようなコンピュータの数々。
さらに壁一面にパネルが取り付けられていて、そこからさまざまなものがモニターされていた。
ニュースからお笑い、近所の風景エトセトラ・・・
そこでようやくビックリマンが自分の近くで眠っていたことに気づいた。
・・・で、結局どうなっているんだ?

「HUHAHAHAHA!」
スピーカーから大音量のコールの声が聞こえてきた。

ああ。やっぱりこいつか・・・。
最初から気づくべきだったな。怪しすぎたし。

そんな俺にお構いなくで、コールは宣言した。





「ここに、コール研究所設立を宣言する!」





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