<第六章 それぞれの話>

エピローグ


白い部屋の中にヨミは佇んでいた。
金髪の髪はゆらゆらと揺れ、表情はいつもと変わらない。

『つまらないなぁ』

呟いたのは自分の声。
ただし、それに答えてくれる者はここにはいない。
せっかく小さな光と会えたのに。
予想以上におもしろい存在だったのに。

名前をつけてくれた存在。
影に感情を与えてくれた存在。
自分に楽しみをもたらしてくれた存在。

消えてしまった。
わずかに芽生えた影の感情はまた緩やかに消滅してしまうだろう。

眠ろう。
そう思って中央にある寝台に移動する。
眠って、眠って、楽しいことがある前にまた起きよう。

「ヨミ様。」

体を倒した後、部屋に入ってきたのは赤だった。
ごろんと赤の方に転がって寝台に腰掛ける。

「名前で呼ばれたなぁ。」

嬉しくてそういうと、赤もわずかに微笑んだ。
いつも『あの方』だの『あなた様』だの呼ばれるのは、
正直楽しくなかった。

「気に入っていらっしゃいますね。」

「もういなくなったけどなぁ」

「もう一度、創られてはいかがですか?」

赤の問いかけにヨミは首を振る。
そして、再びごろりと横になった。

「同じものはないからなぁ。」

「そう・・・ですね。」

「それで・・・いつ、目を覚まされますか?」

「んー。」

まだ決めてなかった。
いつにしようか。
いっそのことこのまま眠り続けるのも悪くない。

すっと目を開けた。
先が見える。
自分の先の軌道が見える。
そして、そこに・・・

「んー?」

「どうされました?」

そこで、ヨミは笑みを深くした。
そして勢いよく立ち上がる。
ぴょこぴょこしながら部屋を横切った。

「接触、接近、大接近だなぁ♪」

自分のこれから行く未来の軌道。
その中ですぐ近い未来、接触するものがあった。


ヨミの波長と同じ―――――小さな光。

見覚えのある小さな光。

ワクワクした。
嬉しかった。
今度こそ、手放したくない魂。




その未来を見た目の中に、アルギズ・F・ソウェルの存在が、確かに記されていた。










<第六章 それぞれの話> 完
<最終章 神々の狂想曲> へ つづく


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