<第五章 一縷の希望>
プロローグ
―夢を見た。俺の知らない、暖かな夢。
「オメェ、まだそんな物つけてんのかよ?」
青年はつぶやいた。
対して、青年と同い年くらいの女性は怒ったように顔をしかめる。
「つけて悪い?誰かさんが結婚指輪の変わりにくれたものなんですけど?」
桜の香りがただようその香水の小ビンを、青年の目の前につきつけた。
青年は参ったというように両手をあげる。
「あーあー。悪かったよ。新しいの買ってきてやるって。次の市場にでも・・・」
「何言ってるの!もうなくなるんだからさっさと買う!あんたの誕生日までに!!」
「はあっ!?俺様の誕生日だろ!?なんで買うんだよ!!」
ケンカのようで、本心では全く怒っていない二人の会話
暖かい、家族の会話
幸せだったのだろう
「あー!!わーったよ!!ったく・・・もうすぐ国境攻防戦だってのに・・・」
「そう?じゃあ稼げるわね?」
「のんきなもんだよなぁ?もしかしたら死体になって帰ってくるかもしんねーのに。」
「なーに言ってるのよ?生き残って、私の香水きちんと買ってきなさい!」
そして、幸せの二人の知らない未来
「約束よ?」
「約束な。そっちもちゃんと祝えよ?」
「ええ。約束、ね?」
「あいあい。期待していますよ?桜さん?」
―――――・・・・・・。
双影 秋 ソウエ アキ
26歳
戦乱のさなか多くの功績を残すも、
敵に囲まれ死亡。
つづく
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